日本にはない年次有給休暇の買取り制度、きちんと理解しましょう!

2024.7.8

今回は、日本とタイでの取り扱いが大きく違う年次有給休暇、そのなかでも特に「未使用の休暇の買取り制度」について取り上げます。

まずは日本の制度についておさらい

まずは日本の制度からおさらいしていきましょう。
日本には年次有給休暇の買取り(買上げ)制度はありません。
行政通達によると、「有給休暇の買上げの予約をし、これに基づいて法第39条の規定により請求し得る有給休暇の日数を減じ、ないし請求された日数を与えないことは、法第39条の違反である」とされています。

そもそも年次有給休暇は、労働者の心身を休ませ、疲労回復させること等を目的とした制度ですので、制度の趣旨を逸脱するような休暇の買取りは原則認められていません。

しかしこれは有効期間がまだある休暇をその途中で買取ることに対するものです。退職時に使いきれなかったことで失効してしまう分を、その日数に応じて金銭の支払いを行う、いわゆる「事後買取り」については休暇の取得を制限するわけではないため労基法に違反しないという見解が一般的なようです。

タイでの考え方を確認してみましょう

タイではどうでしょうか。

そもそもタイの労働者保護法では、年次有給休暇の基本的な有効期限が1年間と日本より短いです。この1年間の有効期限が切れるタイミングで消化できていない分=失効してしまう日数分は原則として買取りしなければなりません。

ただし、あらかじめ労使間の協議にて決めておけば、翌年度以降に繰り越すことができます。(就業規則に年次有給休暇の繰越規定を入れておくことが一般的です。)

繰り越し期間の上限は労働者保護法には明記されていません。しかし、民商法には労使間における賃金債権の時効は2年と定められています。有給休暇も賃金債権に該当しますので、年次有給休暇の繰り越し上限も2年となります。繰り越した分が使い切れず期限の時点で残っている場合は、原則として直近の給与を基準として算出した額で買取る必要があります。

どんな時に買取りが必要なの?

買取りについて触れましたが、すべての場合で買取りが義務というわけではありません。
基本的には解雇や退職の場合は、当年度付与分、繰り越し分に関わらず買取り義務があります。ただし、懲戒解雇や自己都合での退職の場合に限っては、当年度の付与分については買い取らなくてもよいことになっています。

買取り義務の有無

在職中一般解雇
(会社都合)
懲戒解雇・
自己都合退職
当年度付与分ありありなし
繰り越し分ありありあり
繰り越し分
(取得奨励あり)
なしなしなし

また、上記の表の一番下にあるように、前年度からの繰り越し分でなおかつ会社側からの取得奨励をしたにも関わらず失効してしまう分は買取りをしなくてもよいという見解が一般的なようです。
取得奨励とは、休暇取得の奨励日を設けたり、有効期限が近い休暇がある場合に従業員本人にリマインドしたりすることを指します。リマインド方法について、KING OF TIMEにおすすめの機能がありますので後ほどご紹介します。

繰り越し期間やどのような場合に買取りするのか、しないのかについては賃金に直結する部分ですのでトラブルになりがちです。トラブルを未然に防ぐためにも就業規則に明記しておくことが重要です。

どのように管理するのが望ましいの?

休暇を翌年に持ち越すにせよ、買取るにせよ従業員ごとにそれぞれ何日付与され、何日使用したか、現時点での残日数は何日か把握しておく必要があります。

KING OF TIMEでは、付与された日数や使用した日数などを従業員ごとに管理することができます。

またそれだけでなく、今年度消滅予定の日数や、退職時点での残日数を一目で把握可能です。

また、先ほども触れましたがKING OF TIMEは、有効期限が近づいても消化できてない場合にメールで従業員本人やその管理者に通知する機能もご用意しています!

通知のタイミングを失効日の何日前とするかは企業独自に決めていただけます。
1回目は60日前に、2回目は30日前に、など複数回の通知も可能です。

年次有給休暇の趣旨や制度をしっかりと理解、周知し、従業員に心身ともに健康に働いてもらえる環境を整えましょう。