タイ労働法と日本労働法の違い③

2023.7.6

タイの時間外・休日・深夜と日本の考え方の違い

日本の労基法では、休日について「使用者は、少なくとも毎週1回の休日か、4週間を通じ4日以上の休日を与えなければならない」と定められておりますが、実際の休日はどのような状況なのか、『令和3年就労条件総合調査』で確認してみました

この調査報告では、週休2日制は83.5%、うち完全週休2日制は48.4%。また週休1日の企業は全体で8%と週休2日制が定着していることが伺えます。

ではタイの休日事情はどのような状況なのだろうか

タイの休日と深夜事情は

タイでは1週間に1日以上の休日を与えなければならず、工場も一部週休1日もありますが、週休2日制へ移行している企業が増えています。なお、官公庁および公立学校は大臣告示で土日休みの週休2日制となっております。

また、タイでは深夜労働による割増賃金は法律的にはないものの、工場等では24時間の2交代制、または3交代制なので、深夜シフト手当等の手当で補っているケースが見受けられます。

タイと日本の割増率を整理しよう!

タイと日本の割増率については以下の通りとなります。

時間外割増休日割増深夜割増
日本125%
(60時間超は+25%)
135%25%
タイ150%200%割増なし

※ただし、正社員は月給者100%、時間給・日給労働者は200%となります

これらの整理した情報を元に実態に合わせて検討してみます。

タイと日本の原理原則を整理!

前回のブログでもご案内しましたが、日本の1日8時間、週40時間に対し、タイは1日8時間、週48時間を超えて労働させた場合、割増が必要となります。しかしながら、タイ労働者保護法の趣旨では、労使合意があれば、「週48時間以内に収まるのであれば、月給労働者に対しては1日9時間まで時間外割増が不要」ということをお伝えしました。

従って、タイでは就業規則に加え、労働者との個別合意でどのような労働条件を結んだのかが、その後の労使紛争排除には必要だと言うことになります。

日本の休日割増の基本的な考え方

日本で例えば土日休日の会社が、土曜日または日曜日のいずれかに休日労働させた事例で考えてみます。この割増率ですが、週1日の休日が与えられているなら、時間外労働と同じ時間あたりの賃金の125%の割増で法律上は何ら問題ありません。休日出勤すると、必ず時間あたり賃金に対し135%(休日割増)を支払うわけではないのです。

例)

月曜火曜水曜木曜金曜土曜日曜
労働時間9時間10時間8時間8時間9時間8時間休日
残業時間1時間2時間0時間0時間1時間8時間休日
割増率125%125%0%0%125%125%

もちろん、土日休日の企業でどちらか休日を与えたとしても、土曜又は日曜勤務に対して休日割増135%で支払うことは何ら問題ありません。この辺りは就業規則でどのような割増率で支払うのか、法定休日を定めているか否かに依るところとなります。

タイの休日労働は給与体系で割増率が変わる?!

タイの休日割増は原則時間あたりの賃金の1倍となっております。月給制で雇用した社員の給与は月給に、休日の賃金が含まれていると解されます。トータルでは2倍支給していることになります。

また、タイ労働法の休日とは、会社で定めた休日という考えになります。例えば、土日を休日として定めた場合、週48時間以内の労働であっても、土日は100%の割増になるので、就業規則の定めた方が肝要ということになります。

例)タイ労働法に照らした割増率(月給の社員のケースで休日は日曜のみ)

月曜火曜水曜木曜金曜土曜日曜
労働時間9時間10時間8時間8時間9時間4時間4時間
残業時間1時間2時間0時間0時間1時間0時間4時間
割増率150%150%0%0%150%0% (※)100%

※土曜日は週所定48時間に対し、土曜日の4時間は所定内で収まっているので割増は不要となり、日曜日は休日割増100%支給しなければなりません。

一方、アルバイトやパートのような非正規雇用の従業員の場合、賃金基礎が時給で支給されているから、時間あたり賃金の200%以上支給しなければなりません。

では、休日労働日に時間外まで労働が及んだ場合はどうなるのでしょうか。

日本であれば休日労働が時間外に及んでも休日割増135%で事足りるのですが、タイの場合、社員およびパート・アルバイトを問わず300%を加算して支給します。

例)タイ労働法に照らした割増率(日給で土日休みのケース)

月曜火曜水曜木曜金曜土曜日曜
労働時間9時間10時間8時間8時間9時間10時間休日
残業時間1時間2時間0時間0時間1時間10時間休日
割増率150%150%0%0%150%※2

※2. 土曜日は10時間のうち8時間までは休日割増しの200%を支給し、時間外の2時間については300%を支給しなければならない。

このように日本の労働時間法制と比較すると、タイ労働時間の考え方が整理できるかと思います。勤怠時間集計の際は十分留意してください。