2024.11.25

前回は病気休暇をピックアップしましたが、今回は基本に立ち戻って、タイの休暇制度について取り上げます。タイと日本の休暇制度を比較しながら、ありがちなトラブルとその予防策についてもご紹介していきます。
それぞれの休暇制度を確認しましょう
そもそも、休暇は大きく「法定休暇」と「法定外休暇」の2つに分けられます。法定休暇とは文字通り法律で定められている休暇のことで、企業は従業員から請求があった場合には法定休暇を与える義務があります。タイと日本に共通する法定休暇だと年次有給休暇や出産に関する休暇などがあげられます。
一方、法定外休暇とは企業独自に定められる休暇のことです。特別休暇と呼ばれることもありますが、法律で義務付けられているわけではありません。そのためどんな休暇を設けるか、取得条件をどうするかなど企業が自由に決めることができます。
タイには法定休暇が7つあり、労働者保護法で定められています。以下の通りです。
年次休暇、用事休暇、病気休暇、出産休暇、不妊手術休暇、兵役休暇、研修休暇
日本の法定休暇は、10あり、労働基準法や育児・介護休業法等で定められています。
以下の通りです。
年次有給休暇、生理休暇、妊娠休暇・通院休暇、産前産後休業、子の看護休暇、介護休暇、出生時育児休業、育児休業、介護休業、裁判員休暇
タイと日本の休暇制度ってどう違うの?
タイと日本の休暇制度には、大きく違う点が2つあります。
1つ目は、法定休暇を「有給とするか無給とするか」の取り扱いです。
タイの法定休暇は一部を除いて有給とする必要がありますが、日本では年次有給休暇以外は有給とすることが義務付けられていません。そのため日本では休暇を取得する権利は保障しなければなりませんが、取得した際は無給とすることもできます。
2つ目は、休暇取得を理由とした不利益取り扱いの可否です。
タイでは病気休暇を一定日数以上取得した場合に昇給や昇格、賞与査定で差をつけることや、皆勤手当を不支給とすることなど、休暇の取得を抑制するような措置を認めています。
一方、日本では法定休暇を取得したことで、その日を欠勤扱いとすることはもちろん、昇給や昇格、賞与査定で差をつけることや、皆勤手当がある場合に不支給(あるいは減額)とすることなどは禁止されています。
病気休暇については、以前こちらの記事にて詳しく取り上げていますのであわせてご参照ください。
2024年9月30日更新:日本とは違う?「病気休暇」に多いトラブルとは
タイの休暇管理で特に注意したいポイントは?

タイでの休暇管理で注意したいポイントはやはり、法定休暇に有給の休暇が多いという点でしょう。
特に病気休暇や用事休暇は取得のハードルが比較的低く、しかも病気休暇は年に30日間、用事休暇は年に3日間、有給の休暇として使えるため年次休暇と同じように取得してしまおう!と考える従業員が多い傾向にあります。
また、タイでは欠勤や休暇の連絡を個人のメッセージアプリなどでやり取りされている企業も多いでしょう。
こちらの傾向を踏まえて、トラブルを未然に防ぐために押さえておきたいのは次の2つです。
- 就業規則等にきちんと明文化しておくこと
取得の際の条件や、取得の際に提出してもらいたいもの、有給になる日数などを就業規則等に明記しておくことが重要です。また、就業規則は従業員ならいつでも閲覧できる状態にしておきましょう。 - 休暇取得の際の連絡ルールを整備しておくこと
個人間のメッセージアプリでのやりとりのみでは、誰がいつどの休暇を取得しているのか、業務的なフォローが必要なのかなどの把握が難しくなりがちです。休暇の連絡は、事前にわかっているようであれば共有カレンダーに登録しておくことや、急な休暇であればメールや電話などでいつまでに連絡をするかなど、あらかじめルールを整備しておきましょう。そして可能であれば、整備した内容を明文化しておくことをおすすめします。
KING OF TIMEおすすめ機能
KING OF TIMEでは病気休暇やその他の休暇を、半年、1年の間にどれくらい取得しているか、一覧で確認することができます。
複数月、複数の従業員の実績をまとめて確認いただけますので、賞与や昇給昇格の際の指標としてのご利用にピッタリです。
使用例:各月で病気休暇を取得した日数を半年分一覧表示

上記の例は半年間ですが、任意の期間を指定いただけます。また、Excel出力も可能ですのでこちらのデータと他のデータを合わせて二次加工していただくことも可能です。
次回はタイの労災制度を取り上げます。日本とタイで異なる点や注意点について整理する予定ですのであわせてご覧ください。